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吾輩は猫である-第19章

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..



三 … 3


「どうも御退屈様、もう帰りましょう」と茶を注(つ)ぎ易(か)えて迷亭の前へ出す。「どこへ行ったんですかね」「どこへ参るにも断わって行った事の無い男ですから分りかねますが、大方御医者へでも行ったんでしょう」「甘木さんですか、甘木さんもあんな病人に捕(つら)まっちゃ災難ですな」「へえ」と細君は挨拶のしようもないと見えて簡単な答えをする。迷亭は一向(いっこう)頓着しない。「近頃はどうです、少しは胃の加減が能(い)いんですか」「能(い)いか悪いか頓(とん)と分りません、いくら甘木さんにかかったって、あんなにジャムばかり甞(な)めては胃病の直る訳がないと思います」と細君は先刻(せんこく)の不平を暗(あん)に迷亭に洩(も)らす。「そんなにジャムを甞めるんですかまるで小供のようですね」「ジャムばかりじゃないんで、この頃は胃病の薬だとか云って大根卸(だいこおろ)しを無暗(むやみ)に甞めますので……」「驚ろいたな」と迷亭は感嘆する。「何でも大根卸(だいこおろし)の中にはジヤスタ激肖毪趣皮υ挙筏蛐侣劋钦iんでからです」「なるほどそれでジャムの損害を償(つぐな)おうと云う趣向ですな。なかなか考えていらあハハハハ」と迷亭は細君の訴(うったえ)を聞いて大(おおい)に愉快な気色(けしき)である。「この間などは赤ん坊にまで甞めさせまして……」「ジャムをですか」「いいえ大根卸(だいこおろし)を……あなた。坊や御父様がうまいものをやるからおいでてって、――たまに小供を可愛がってくれるかと思うとそんな馬鹿な事ばかりするんです。二三日前(にさんちまえ)には中の娘を抱いて箪笥(たんす)の上へあげましてね……」「どう云う趣向がありました」と迷亭は何を聞いても趣向ずくめに解釈する。「なに趣向も何も有りゃしません、ただその上から飛び下りて見ろと云うんですわ、三つや四つの女の子ですもの、そんな御転婆(おてんば)な事が出来るはずがないです」「なるほどこりゃ趣向が無さ過ぎましたね。しかしあれで腹の中は毒のない善人ですよ」「あの上腹の中に毒があっちゃ、辛防(しんぼう)は出来ませんわ」と細君は大(おおい)に気焔(きえん)を揚げる。「まあそんなに不平を云わんでも善いでさあ。こうやって不足なくその日その日が暮らして行かれれば上(じょう)の分(ぶん)ですよ。苦沙弥君(くしゃみくん)などは道楽はせず、服装にも構わず、地味に世帯向(しょたいむ)きに出来上った人でさあ」と迷亭は柄(がら)にない説教を陽気な眨婴扦浃盲皮い搿!袱趣长恧ⅳ胜看筮‘いで……」「何か内々でやりますかね。油断のならない世の中だからね」と飄然(ひょうぜん)とふわふわした返事をする。「ほかの道楽はないですが、無暗(むやみ)に読みもしない本ばかり買いましてね。それも善い加減に見計(みはか)らって買ってくれると善いんですけれど、勝手に丸善へ行っちゃ何冊でも取って来て、月末になると知らん顔をしているんですもの、去年の暮なんか、月々のが溜(たま)って大変困りました」「なあに書物なんか取って来るだけ取って来て構わんですよ。払いをとりに来たら今にやる今にやると云っていりゃ帰ってしまいまさあ」「それでも、そういつまでも引張る訳にも参りませんから」と妻君は憮然(ぶぜん)としている。「それじゃ、訳を話して書籍費(しょじゃくひ)を削減させるさ」「どうして、そんな言(こと)を云ったって、なかなか聞くものですか、この間などは貴様は学者の妻(さい)にも似合わん、毫(ごう)も書籍(しょじゃく)の価値を解しておらん、昔(むか)し羅馬(ロ蓿─摔长υ皮υ挙筏ⅳ搿a嵫Г韦郡崧劋い皮堡仍皮Δ螭扦埂埂袱饯辘忝姘驻ぁⅳ嗓螭试挙筏扦工姑酝い蟻気になる。細君に同情を表しているというよりむしろ好奇心に駆(か)られている。「何んでも昔し羅馬(ロ蓿─碎捉穑à郡毪螅─趣皮ν鯓敜ⅳ盲啤埂搁捉穑à郡毪螅俊¢捉黏悉沥让瞍扦工肌埂杆饯咸迫耍à趣Δ袱螅─蚊胜螭啶氦筏埔櫎à椁欷蓼护螭铩:韦扦馄叽郡胜螭坤饯Δ扦埂埂袱胜毪郅善叽块捉黏厦瞍扦工省¥栅螭饯纹叽块捉黏嗓Δ筏蓼筏郡ぁ埂袱ⅳ椤ⅳⅳ胜郡蓼抢浃筏皮狭ⅳ臑仱ⅳ辘蓼护螭铩V盲皮い椁盲筏悚毪胜榻踏à葡陇丹欷肖いい袱悚ⅳ辘蓼护螭⑷摔螑櫎ぁ工取⒓毦厦酝い厥长盲茠欷搿!负卫浃工胜螭啤ⅳ饯螭嗜摔螑櫎な陇颏工雰Wじゃない。ただ七代目樽金は振(ふる)ってると思ってね……ええお待ちなさいよ羅馬(ロ蓿─纹叽郡瓮鯓敜扦工汀ⅳ长Δ盲趣郡筏摔弦櫎à皮い胜い咯‘クイン·ゼ·プラウドの事でしょう。まあ誰でもいい、その王様がどうしました」「その王様の所へ一人の女が本を九冊持って来て買ってくれないかと云ったんだそうです」「なるほど」「王様がいくらなら売るといって聞いたら大変な高い事を云うんですって、あまり高いもんだから少し負けないかと云うとその女がいきなり九冊の内の三冊を火にくべて焚(や)いてしまったそうです」「惜しい事をしましたな」「その本の内には予言か何かほかで見られない事が書いてあるんですって」「へえ埂竿鯓敜暇艃预鶅预摔胜盲郡樯伽筏蟻à停─鉁pったろうと思って六冊でいくらだと聞くと、やはり元の通り一文も引かないそうです、それは乱暴だと云うと、その女はまた三冊をとって火にくべたそうです。王様はまだ未練があったと見えて、余った三冊をいくらで売ると聞くと、やはり九冊分のねだんをくれと云うそうです。九冊が六冊になり、六冊が三冊になっても代価は、元の通り一厘も引かない、それを引かせようとすると、残ってる三冊も火にくべるかも知れないので、王様はとうとう高い御金を出して焚(や)け余(あま)りの三冊を買ったんですって……どうだこの話しで少しは書物のありがた味(み)が分ったろう、どうだと力味(りき)むのですけれど、私にゃ何がありがたいんだか、まあ分りませんね」と細君は一家の見識を立てて迷亭の返答を促(うな)がす。さすがの迷亭も少々窮したと見えて、袂(たもと)からハンケチを出して吾輩をじゃらしていたが「しかし奥さん」と急に何か考えついたように大きな声を出す。「あんなに本を買って矢鱈(やたら)に詰め込むものだから人から少しは学者だとか何とか云われるんですよ。この間ある文学雑誌を見たら苦沙弥君(くしゃみくん)の評が出ていましたよ」「ほんとに?」と細君は向き直る。主人の評判が気にかかるのは、やはり夫婦と見える。「何とかいてあったんです」「なあに二三行ばかりですがね。苦沙弥君の文は行雲流水(こううんりゅうすい)のごとしとありましたよ」細君は少しにこにこして「それぎりですか」「その次にね――出ずるかと思えば忽(たちま)ち消え、逝(ゆ)いては長(とこしな)えに帰るを忘るとありましたよ」細君は妙な顔をして「賞(ほ)めたんでしょうか」と心元ない眨婴扦ⅳ搿!袱蓼①pめた方でしょうな」と迷亭は済ましてハンケチを吾輩の眼の前にぶら下げる。「書物は商買道具で仕方もござんすまいが、よっぽど偏屈(へんくつ)でしてねえ」迷亭はまた別途の方面から来たなと思って「偏屈は少々偏屈ですね、学問をするものはどうせあんなですよ」と眨婴蚝悉铯护毪瑜Δ售妥oをするような不即不離の妙答をする。「せんだってなどは学校から帰ってすぐわきへ出るのに着物を着換えるのが面倒だものですから、あなた外套(がいとう)も脱がないで、机へ腰を掛けて御飯を食べるのです。御膳(おぜん)を火牐à长郡膜浃挨椋─紊悉貋せまして――私は御櫃(おはち)を抱(かか)えて坐っておりましたがおかしくって……」「何だかハイカラの首実検のようですな。しかしそんなところが苦沙弥君の苦沙弥君たるところで――とにかく月並(つきなみ)でない」と切(せつ)ない褒(ほ)め方をする。「月並か月並でないか女には分りませんが、なんぼ何でも、あまり乱暴ですわ」「しかし月並より好いですよ」と無暗に加勢すると細君は不満な様子で「一体、月並月並と皆さんが、よくおっしゃいますが、どんなのが月並なんです」と開き直って月並の定義を伲鼏枻工搿ⅰ冈聛Kですか、月並と云うと――さようちと説明しにくいのですが……」「そんな曖昧(あいまい)なものなら月並だって好さそうなものじゃありませんか」と細君は女人(にょにん)一流の論理法で詰め寄せる。「曖昧じゃありませんよ、ちゃんと分っています、ただ説明しにくいだけの事でさあ」「何でも自分の嫌いな事を月並と云うんでしょう」と細君は我(われ)知らず穿(うが)った事を云う。迷亭もこうなると何とか月並の処置を付けなけれ
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