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「うん、ちと考え事があるもんだから」
「考えていたって通れくらいは云えるだろう」
「云えん事もないさ」
「相変らず度胸がいいね」
「せんだってから精神の修養を力(つと)めているんだもの」
「物好きだな。精神を修養して返事が出来なくなった日には来客は御難だね。そんなに落ちつかれちゃ困るんだぜ。実は僕一人来たんじゃないよ。大変な御客さんを連れて来たんだよ。ちょっと出て逢ってくれ給え」
「誰を連れて来たんだい」
「誰でもいいからちょっと出て逢ってくれたまえ。是非君に逢いたいと云うんだから」
「誰だい」
「誰でもいいから立ちたまえ」
。。
九 … 7
…。网
主人は懐手(ふところで)のままぬっと立ちながら「また人を担(かつ)ぐつもりだろう」と椽側(えんがわ)へ出て何の気もつかずに客間へ這入(はい)り込んだ。すると六尺の床を正面に一個の老人が粛然(しゅくぜん)と端坐(たんざ)して控(ひか)えている。主人は思わず懐から両手を出してぺたりと唐紙(からかみ)の傍(そば)へ尻を片づけてしまった。これでは老人と同じく西向きであるから双方共挨拶のしようがない。昔堅気(むかしかたぎ)の人は礼義はやかましいものだ。
「さあどうぞあれへ」と床の間の方を指して主人を促(うな)がす。主人は両三年前までは座敷はどこへ坐っても構わんものと心得ていたのだが、その後(ご)ある人から床の間の講釈を聞いて、あれは上段の間(ま)の変化したもので、上使(じょうし)が坐わる所だと悟って以来決して床の間へは寄りつかない男である。ことに見ず知らずの年長者が頑(がん)と構えているのだから上座(じょうざ)どころではない。挨拶さえ碌(ろく)には出来ない。一応頭をさげて
「さあどうぞあれへ」と向うの云う通りを繰り返した。
「いやそれでは御挨拶が出来かねますから、どうぞあれへ」
「いえ、それでは……どうぞあれへ」と主人はいい加減に先方の口上を真似ている。
「どうもそう、御謙遜(ごけんそん)では恐れ入る。かえって手前が痛み入る。どうか御遠懀Г胜ⅳ丹ⅳ嗓Δ尽
「御謙遜では……恐れますから……どうか」主人は真赤(まっか)になって口をもごもご云わせている。精神修養もあまり効果がないようである。迷亭君は遥à栅工蓿─斡挨樾Δい胜榱⒁姢颏筏皮い郡ⅳ猡Δいr分だと思って、後(うし)ろから主人の尻を押しやりながら
「まあ出たまえ。そう唐紙(からかみ)へくっついては僕が坐る所がない。遠懀Г护氦饲挨爻訾郡蓼ā工葻o理に割り込んでくる。主人はやむを得ず前の方へすり出る。
「苦沙弥君これが毎々君に噂をする静岡の伯父だよ。伯父さんこれが苦沙弥君です」
「いや始めて御目にかかります、毎度迷亭が出て御邪魔を致すそうで、いつか参上の上御高話を拝聴致そうと存じておりましたところ、幸い今日(こんにち)は御近所を通行致したもので、御礼旁(かたがた)伺った訳で、どうぞ御見知りおかれまして今後共宜(よろ)しく」と昔(むか)し風な口上を淀(よど)みなく述べたてる。主人は交際の狭い、無口な人間である上に、こんな古風な爺(じい)さんとはほとんど出会った事がないのだから、最初から多少場(ば)うての気味で辟易(へきえき)していたところへ、滔々(とうとう)と浴びせかけられたのだから、朝鮮仁参(ちょうせんにんじん)も飴(あめ)ん棒の状袋もすっかり忘れてしまってただ苦しまぎれに妙な返事をする。
「私も……私も……ちょっと伺がうはずでありましたところ……何分よろしく」と云い終って頭を少々畳から上げて見ると老人は未(いま)だに平伏しているので、はっと恐縮してまた頭をぴたりと着けた。
老人は呼吸を計って首をあげながら「私ももとはこちらに屋敷も在(あ)って、永らく御膝元でくらしたものでがすが、瓦解(がかい)の折にあちらへ参ってからとんと出てこんのでな。今来て見るとまるで方角も分らんくらいで、――迷亭にでも伴(つ)れてあるいてもらわんと、とても用達(ようたし)も出来ません。滄桑(そうそう)の変(へん)とは申しながら、御入国(ごにゅうこく)以来三百年も、あの通り将軍家の……」と云いかけると迷亭先生面倒だと心得て
「伯父さん将軍家もありがたいかも知れませんが、明治の代(よ)も結構ですぜ。昔は赤十字なんてものもなかったでしょう」
「それはない。赤十字などと称するものは全くない。ことに宮様の御顔を拝むなどと云う事は明治の御代(みよ)でなくては出来ぬ事だ。わしも長生きをした御蔭でこの通り今日(こんにち)の総会にも出席するし、宮殿下の御声もきくし、もうこれで死んでもいい」
「まあ久し振りで枺┮娢铯颏工毪坤堡扦獾盲扦工琛?嗌趁志⒉袱悉汀=穸瘸嗍证尉t会があるのでわざわざ静岡から出て来てね、今日いっしょに上野へ出掛けたんだが今その帰りがけなんだよ。それだからこの通り先日僕が白木屋へ注文したフロックコ趣蜃扭皮い毪韦怠工茸⒁猡工搿¥胜毪郅丧榨恁氓畅‘トを着ている。フロックコ趣献扭皮い毪工长筏猡椁坤撕悉铯胜ぁP洌à饯牵─L過ぎて、襟(えり)がおっ開(ぴら)いて、背中(せなか)へ池が出来て、腋(わき)の下が釣るし上がっている。いくら不恰好(ぶかっこう)に作ろうと云ったって、こうまで念を入れて形を崩(くず)す訳にはゆかないだろう。その上白シャツと白襟(しろえり)が離れ離れになって、仰(あお)むくと間から咽喉仏(のどぼとけ)が見える。第一そ箫棨辘螭耸簸筏皮い毪韦ⅴ伐悭膜耸簸筏皮い毪韦腥唬à悉螭激螅─筏胜ぁ%榨恁氓悉蓼牢衣隼搐毪左姡à筏椁─违隶绁篌敚à蓼玻─悉悉胜悉榔嬗Qである。評判の鉄扇(てっせん)はどうかと目を注(つ)けると膝の横にちゃんと引きつけている。主人はこの時ようやく本心に立ち返って、精神修養の結果を存分に老人の服装に応用して少々驚いた。まさか迷亭の話ほどではなかろうと思っていたが、逢って見ると話以上である。もし自分のあばたが歴史的研究の材料になるならば、この老人のチョン髷(まげ)や鉄扇はたしかにそれ以上の価値がある。主人はどうかしてこの鉄扇の由来を聞いて見たいと思ったが、まさか、打ちつけに伲鼏枻工朐Uには行かず、と云って話を途切らすのも礼に欠けると思って
「だいぶ人が出ましたろう」と極(きわ)めて尋常な問をかけた。
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九 … 8
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「いや非常な人で、それでその人が皆わしをじろじろ見るので――どうも近来は人間が物見高くなったようでがすな。昔(むか)しはあんなではなかったが」
「ええ、さよう、昔はそんなではなかったですな」と老人らしい事を云う。これはあながち主人が知(し)っ高振(たかぶ)りをした訳ではない。ただ朦朧(もうろう)たる頭脳から好い加減に流れ出す言語と見れば差(さ)し支(つか)えない。
「それにな。皆この甲割(かぶとわ)りへ目を着けるので」
「その鉄扇は大分(だいぶ)重いものでございましょう」
「苦沙弥君、ちょっと持って見たまえ。なかなか重いよ。伯父さん持たして御覧なさい」
老人は重たそうに取り上げて「失礼でがすが」と主人に渡す。京都の龋à恧坤耍─遣卧勅耍à丹螭堡い摔螅─徤唬à欷螭筏绀Δ埭Γ─翁叮à郡粒─虼鳎àい郡溃─瑜Δ胜郡恰⒖嗌趁窒壬筏肖椁证盲皮い郡袱胜毪郅伞工仍皮盲郡蓼蘩先摔朔等搐筏俊
「みんながこれを鉄扇鉄扇と云うが、これは甲割(かぶとわり)と称(とな)えて鉄扇とはまるで別物で……」
「へえ、何にしたものでございましょう」
「兜を割るので、――敵の目がくらむ所を撃(う)ちとったものでがす。楠正成(くすのきまさしげ)時代から用いたようで……」
「伯父さん、そりゃ正成の甲割ですかね」
「いえ、これは誰のかわからん。しかし時代は古い。建武時代(けんむじだい)の作かも知れない」
「建武時代かも知れないが、寒月君は弱っていましたぜ。苦沙弥君、今日帰りにちょうどいい機会だから大学を通り抜けるついでに理科へ寄って、物理の実験室を見せて貰ったところがね。この甲割が鉄だものだから、磁力の器械が狂って大騒ぎさ」
「いや、そんなはずはない。これは建武時代の鉄で、性(しょう)のいい鉄だから決してそんな虞(おそ)れはない」
「いくら性のいい鉄だってそうはいきませんよ。現に寒月がそう云ったから仕方がないです」
「寒月というのは、あのガラス球(だま)を磨(す)っている男かい。今の若さに気の毒な事だ。もう少し何かやる事がありそうなものだ」
「可愛想(かわいそう)に、あれだって研究でさあ。あの球を磨り上げると立派な学者になれるんですからね」
「玉を磨(す)りあげて立派な学者になれるなら、誰にでも出来る。わしにでも出来る。ビ